dhtakeuti’s thoughts

主に開発やPCについて考えたこと、感じたことの記録

Intel - Project Athena

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Project Athena 2019

COMPUTEX 2019 でインテルから発表された Project Athena (仮称) によって、3年後のノートブックPCを考えてみる。

参考:次世代ノートPCでは1秒復帰/薄型狭額縁/AI機能/Core i5以上が標準に - Intelのモダン化規格「Project Athena 1.0」を公表

今回の発表で、ユーザーにとって最も影響が大きくなると感じたのが、入出力インターフェイスの仕様である。ストレージ I/F は NVMe を、無線 LAN には Wi-Fi 6 (IEEE802.11ax Draft 2.0) を、拡張 I/F には USB 4 (Thuberbolt3) をそれぞれ要求している。セルラーモデムはオプションとされているが、5G モデルが想定できる。恐らく、有線 LAN においても 10Gbps が家庭にも普及し始める事が予想される。その通りであれば、現在の標準的なノートブック PC の約10倍の転送速度となる訳だ。

Project Athena に準拠したモデルが、現在の標準的な15万円程度まで価格が下がって来るのに3年かかるのではないかと思う。つまり、2021/1Q モデルが価格もこなれて買い時なのではないだろうか。それに合わせて、周辺機器なども準備していく方が良い。既に無線LAN ルーターでは 10Gbps のモデルがゲーム用として5万円弱で販売されている。10GBASE-T の有線LAN のスイッチングハブは4ポートで7万円弱で販売されている。インターネット接続については、光ファイバーを使用した 5Gbps の回線契約も一般家庭用に出てきはじめている。NAS10GBASE-T 対応のモデルがあり、4ベイで6万円程度で購入できる。

4ベイ NAS に HDD を4台乗せて RAID10 で構成したとしよう。SATA 3.0 接続で RAID による速度低下も考えて、転送速度は 200MB/secくらいは出るはずだ (標準的な 3.5インチの HDD の転送速度は 250MB/sec 位は出る)。勿論 HDD の代わりに全て SSD で構成すれば、SATA 3.0 の上限の 600GB/sec (6Gbps) に近づく事になる。つまり、現在のデスクトップ PC の内蔵 HDD の感覚で NAS 上のファイルにアクセスできる様になるわけだ。

同様に、無線LANを経由して光回線で 5Gbps 出るとすると、サーバー側が対応していれば、理論値では 500MB/sec が出る。実効 30% でも 150MB/sec が期待できるのではないだろうか。更に 5G ネットワークが普及すると、セルラーモデルでは屋外でも同様の速度でインターネットにアクセスできる様になる。例えば、FullHD 画質で1時間半の映画の 60GB の動画データが、7分弱でダウンロードできる事になる。8K 画質の映像の転送には 100Mbps が必要と言われているが、これも 5G 接続で十分賄えるだろう。

さて、インターフェイス全般が約10倍に早くなると、次の様な影響が考えられる。転送速度が上がる。→ 動画や写真の画質が上がる。→ データ容量が増加する。→ バックアップのデータ容量が増加する。つまり、より高解像度で大容量のデータを保持し続けるためには、より安価なバックアップメディアが必要になって来るという事だ。既に我が家ではHDDがバックアップメディアとなって久しいが、そろそろ他のメディアによるバックアップを考えると同時に、バックアップ対象となるデータの見極めも必要になりそうだ。書籍やコミックはオンラインサービスに置き換えつつあるが、サービスの継続ができなくなった場合に、過去に購入した書籍やコミックを見る事ができなくなる危険性と表裏一体となる。音楽データは iTunes で CD からデータ化して所有しているが、書籍とコミックについては読む権利を購入したに過ぎない点が不安材料である。ebookjapan の yahoo への引越しの際に、リーダーアプリの目に余るサービス低下に使用継続を停止しようかと思ったが、これまでに購入した数千冊のコミックが読めなくなるのは回避したいがため、使いにくいリーダーアプリを渋々使っている。データの所有権がないのに紙媒体と同じ値段でいいのか?という疑問もある。それ以外のデータも含めて、複数のクラウドストレージ上にバックアップを置くというのも今後は選択肢に上がるだろう。いずれにせよ、現在と同じくらいの価格で約10倍の容量のストレージ技術が普及する(例えば 100TB HDD が 5万円程度に収まる)とは思えないので、何らかのブレイクスルーがある事を期待せざるを得ない。

CPU の世代は Ice Lake 以降の設計となり、10nm プロセスでの実装となる(はず)。それによって低消費電力が期待でき、バッテリーの稼動時間が伸びる事が期待される。但し、Project Athena では 16 時間以上のバッテリー駆動を要求しており、CPUだけでなくチップセット、ディスプレイやストレージの省電力化が求められる。現在市販されているデスクトップ用の 10GBASE-T 拡張カードには大きなヒートシンクが付いている。それだけ発熱が懸念されるが、これが解消できるのだろうか。また Project Athenaとしては、ディスプレイに 1080p 以上の解像度が要求されているが、昨今の傾向から、4K レベルの解像度のディスプレイが搭載される事が期待したい。これは有機EL よりも低消費電力なディスプレイパネルが出てこないと実現は難しそうだ。それが無理でも 3K レベルのディスプレイが搭載されるだろう。ストレージについても現在は SATA 接続の SSD の方が低消費電力、低発熱であり、NVMe 接続と転送速度以外では価格も含めてメリットがある状況だ。どうにかして SSD は 2TB 程度の容量で現在の 256GB と同じ程度のコストになっていて欲しい。

Project Athenaでは、ペン入力も必須となっている。これにより、クラムシェル型のノートブックPCは存亡の危機に陥るかもしれない。Yogaスタイルか、Surfaceスタイルの 2-in-1 モデルでなければペン入力を活かす事ができないからだ。少なくともディスプレイを180度は開く様になっている必要がある。

Intel が Project Athena で築こうとしている世界は、iPad Pro の延長線と重なるようにも考えられる。Ultrabook も Macbook Air をなぞったような構想であり、モバイル用のノートブックPCは既に Ultrabook の目指した形を実現していると言えよう。Project Athena も、名称が変わるかもしれないが、同様に数年をかけて実現の方向に進むだろう。Project Athena は、その先にどんな未来があるのか楽しみになるような発表であり、久しぶりにワクワクしている。

まとめ

  • Project Athena が発表された。
  • 3年後にはPC周りの通信速度が約10倍になりそうだ。
  • これまでとは異なるPCの使い方が必要になるかもしれない。

ZenPad 3 8.0 から iPad mini (第5世代) に乗り換えて感じたこと

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iPad mini (第5世代)

約1年 ASUS ZenPad 3 8.0 を使っていたが、iPad mini (第5世代) の発表を機に iPad mini (第5世代) Wi-Fi Cellular 64GB を購入して、2ヶ月程使ってみて感じたことをまとめる。以降は単に ZenPadiPad mini と記述する。

変わらなかったこと

  • 画面は ZenPadiPad mini も同じ解像度、大きさで縦横比も 4:3 で同じ。Web のブラジングやコミック、小説を読む、地図を見るのにはこの比率が良い。動画には上下に黒枠が入るため狭く感じる。動画を見るよりも文章を読む方が多いため、自分にとってはこの比率が合っている。
  • 重さは 300g 程度とほぼ同じ。10インチサイズのタブレットより 150g 程軽くなり、片手で持っても苦にならない重さである。
  • バッテリーの持ちはどちらも終日使っても無くならない。
  • 格安 SIM を使用して LTE で常時通信ができるため、国内なら、ほぼどんな所でも通信できる。

変わったこと

  • 持ってはっきりと分かるほど厚さが違う。共にカバーをつけた状態で、 iPad mini の方が薄い。薄すぎて持ちにくい位だが、これは慣れれば気にならないだろう。
  • ざっくりだが、フォントが綺麗で、文字が読みやすい気がする。最近の Android は綺麗になったが、まだ iOS の方が綺麗に感じる。
  • iPad mini では文字入力時に QWERTY 配列で縦向きにして入力しているが、矢印キーが無いので数文字分カーソルを移動するのが、一々画面をタッチして移動するか、スペースバーの長押しでタッチパッドの様に移動するかのどちらかの方法しかない。大きく移動するときは便利だが、一文字単位で移動する場合にはイライラする。こればかりは慣れても気になる仕様だ。iPad 関連のレビューで文字入力する場合にはキーボードが必要、という記事が多いが、ソフトウェアキーボードに矢印キーがあれば随分改善するのでは無いかと思う。ソフトウェアキーボードで入力中に、カーソル移動のために入力画面に指を移動するのは、直感的なのかもしれないが、煩わしい。
  • ソフトウェアキーボードに Undo / Redo / Paste ボタンが表示される。これは便利(アプリケーション依存?)。
  • IMEApple 純正のみで、あまり賢く無い。ZenPad の方が、標準の IME でも入力頻度の高い単語は記憶してくれる。iOS ではすぐに忘れてしまう傾向に思われる。
  • iOS の設計思想によるが、サンドボックス化が徹底しているため、あるファイルに対して、複数のアプリケーションからアクセスできない。ファイル アプリケーションが導入されて改善しているが自由度は低い。セキュリティーとのトレードオフであるため、悩ましい。

まとめ

iPad mini に変えたのは、OS のサポート期間が長いためである。ZenPad は非常にバランスが良いモデルで、OS のサポート期間以外は不満点は無かった。実際に ZenPad の買取価格も ¥17,500 で思ったよりも高い値段で売却できた。発売から 2年以上経っても、それだけ需要があると言うことだと思う。

iPad mini は第5世代になって、SoC も十分な能力を持っている。自分の使用方法では CPU 能力は既に飽和状態である。4年は使えるかもしれない。

購入時に Cellular モデルにするのは決めていたが、ストレージ容量で少し悩んだ。ZenPad では 32GB で microSD カード無しで収まっており、スマートフォンは 64GB で、まだ使い切ったことがないため、256GB は不要と考えた。動画を溜め込まない限り大丈夫だろう。

ZenPad がまだ十分に使える内に乗り換えるのは、金額の面でしばし悩んだが、セキュリティーの面で不安を感じながら使い続けるのは良くないと結論づけた。

先日、京都に7泊8日の旅行に出掛けたが、旅行中は iPad mini が非常に役に立った。写真はスマートフォンで撮影したが、移動の際に Google Map で経路の確認、電車の発車時刻の確認、現在地周辺の喫茶店探しなどと、この画面の広さが重宝した。特に地図はサイズが小さく、横幅も狭いスマートフォンでは把握し難い。また、重くもなくショルダーバッグ (Patagonia ライトウェイト・トラベル・クーリエ) に無理なく収まる大きさは、知らない土地に行く際には心強い味方になった。

ノートブックPC ベンチマーク結果の更新

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以前、気になる機種についてベンチマークの測定結果を載せたが、その後、追加で幾つかの機種を使って計測したので結果を紹介する。

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ベンチマーク対象を追加

ベンチマーク結果

使用しているベンチマークツールは、引き続き Basemark Web 3.0 を使用している。Edge では総合スコアが計測できなかったため、PortableApps Chrome をダウンロードして実行した。Surface Go は、店によっては展示されている機器の Windows 10 Home が S モードのままで、 Chrome が実行できない。別の店では S モードが解除されていたので、ベンチマークを計測する事ができた。

Yoga Book は2代目となり、パフォーマンスは約2倍に向上していることが確認できた。単純に CPU が増強された結果であることが推測できる。ただし期待よりは向上していない。

一方で、意外だったのが Surface Go のスコアである。CPU が Pentium Gold 4415Y で、Yoga Book C930 の Core i5-7Y54 と比べてグレードが低いのだが、ベンチマークスコアでは上回っている。これは Pentium Gold 4415Y ではターボブーストがなく標準の 1.6GHz で動作しているが、一方の Core i5-7Y54 ではターボブーストなしの 1.2GHz で動作していたとしたら、逆転していることが説明できる。ターボブーストがかかっていれば 3.2GHz で Yoga Book C930 の方が速くなるかもしれない。ちなみに、グラッフィックエンジンは Intel HD Graphics 615 で同じだ。Surface Go は US で評判が良かったらしいが、ベンチマーク結果から見ても、サブノート PC としてはそれなりに使えるモデルと言える。

日本国内ではモバイル用途のノートブック PC は 1kg 未満のモデルが各社から販売されており、13.3" で Core シリーズの CPU を乗せて 900g 以下というものも選択できるようになった。これらの軽量モバイルノート PC では U タイプの CPU が使用されており、能力的には ThinkPad X1 Carbon と同等と思われる。

コストパフォーマンス

ベンチマークの結果を元にコストパフォーマンスを見てみる。今回は、Basemark Web 3.0 のベンチマークスコアを費用で割った値を指標にするが、単純に円単位にすると値が小さすぎるため千円あたりのベンチマークスコアで比較してみる。結果は以下のようになる。

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コストパフォーマンス比較

まず、Yoga Book C930 が Yoga Book with Windows よりも値が低くなっていることが分かる。これは、Yoga Book C930 での E-Ink がコストを押し上げているのだろう。そして、Surface Go と ThinkPad X1 Carbon の値が近いのも興味深い。ちなみに Surface Go は、タイプカバーとの合計額で計算している。LG GRAM も若干低いが、近い数値になっている。おそらく、標準的なノートブック PC では、3.0 程度になると思われる。一方、ThinkPad X1 Extream がさえない値となっている。GPUBTX 1050Ti を奢った割にベンチマークスコアが振るわなかったため、コストパフォーマンスは低いという結果となった。また、iMac Pro はベンチマークスコアは高かったが、ディスプレイ込みのコストパフォーマンスでは Yoga Book with Windows 以下となってしまった。対して、HP OMEN ではベンチマークスコアも高かったが、コストパフォーマンスでもずば抜けた値となっている。また、iPad Pro も非常にコストパフォーマンスが高い。Android 端末の2台もコストパフォーマンスとしては高い値を出している。

ここで使用しているベンチマークテストは、ブラウザーでの Web ページの表示能力に偏っている。そして、Surface Go と Yoga Book C930 と比べると、値に2倍の開きがある。この2つの PC は、両方とも 10" ディスプレイを持ち、タッチパネルがあり、ペン入力ができる。違いは、Yoga Book C930 には E-Ink のディスプレイが余分についているという点のみといっても良い。両面でペン入力がある Yoga Book C930 が約1.5倍の値段になるのは仕方がないとも言える。つまり、ペンタブレット付きのノートブック PC としてこの価格差を許容できるかというのが購入時の判断となる。そこで、ワコムペンタブレットの価格を調べてみたところ、13.3" のディスプレイ付きのモデル Cintiq 13HD では ¥66,634 だった(Amazon)。これを Surface Go に追加すると、Yoga Book C930 の値段より1万円ほど高くなり、コストパフォーマンスは 1.90 スコア/千円となった。ただし、このペンタブレットは本体のみで 1.2kg あるため、Suface Go + タイプカバー + ペンタブレットで総重量は 522g + 245g + 1,200g =1,967g となる一方、Yoga Book C930 は 775g である。10" のペンタブレットとノートブック PC が一体となって 775g に収まっていることに Yoga Book C930 の価値があると言えよう。

そして、タブレット、および、スマートフォンのコストパフォーマンスの値が一般的な PC に比べて高くなっている。それだけ Web ページの表示を始め、閲覧の処理にチューニングされていると思われる。そんな中で、ペン入力による静止画作成だけでなく、動画編集、フォトレタッチ、文字入力などの、従来は PC が負っていた制作の能力にもターゲットを据えてきた iPad Pro は底知れない。これでマウス操作までできるようになったら、PC の置き換えが進むのではないだろうか。

Surface Go について

米国や欧州では PC が軽いことはマイナスのイメージが湧くらしく(参考:ITmedia NEWS - 高級路線のノートPC、アルミが使われるのはなぜ? (1/2))、多少重くても頑丈なモデルの方が好まれる(と思われている)様だ。Macbook シリーズの様に主力のモデルではアルミの削り出しで 1.3kg 程度なら軽い方だと言うらしい。他のアジア諸国については分からないが、主な通勤手段が電車と徒歩である日本国内の都市部の人にとっては、持ち歩くノートブック PC は軽ければ軽いほど良い。ただし、満員電車での圧迫に耐えられる強度を持つことは求められる。そういう状況で、Microsoft から全世界を対象として Surface Go を販売したことで、モバイルノート PC のトレンドが変わるかもしれない。

それにしても、何故、日本マイクロソフトSurface Go に Office をプリインストールしたモデルのみを一般販売したのだろうか?しかも、初代モデルは Office 2016 で数ヶ月後には Office 2019 に置き換えられている。初代モデルの購入者はバージョンアップしたのだろうか?Office が無ければ、下位モデルは5万円台で出せたのではないだろうか。確かに、最近は Yoga Book C930 でも家電店では Office 付属モデルも出しているようで、日本では Office のプリインストールのサブスクリプションなしの販売形態が主流であることがうかがえる。

10年ほど前に、ASUS EeePC を始めとするネットブックというのが全世界的に売れたことがあった。スペックは Windows XP が稼働する最低限のレベルではあったが、当時はノートブック PC が20万円が当たり前の所に6万円以下で購入できたのだ。ディスプレイは 7\"~9\" で、重さは約1kg だった。Surface Go は、当時のネットブックを思い出すが、マシンスペックはずっと高い。メインで使用する PC が有れば、サブノート PC として外出時に使用するには十分である。

Surface Go で使用されている Pentium Gold はノートブック PC では殆ど使われていない。低価格で低能力だが消費電力も少ない Atom か、やや高額でコア数が多いが消費電力も増える Core モデルの低電圧版が採用されるのが主流だった。今回のベンチマーク結果から、Surface Go は(日本以外では)低価格ではありつつ、従来の Atom 採用のノートブック PC の倍近い処理能力を持っていることが分かった。スマートフォンよりも生産性は高く、通常のノートブック PC より持ち歩きの負担は少なく、Windows が動く PC にターゲットを絞り込んでバランス良く纏めたのが Surface Go と言える。なるほど、iPad をライバルとして見ていることも、ターゲットを考えたら納得する。

インターネット上でレビュー記事を読んでいると、殆どの人が iPad Pro に Smart Keyboard Folio を付けたり、Bluetooth キーボードを一緒に持ち歩いている。文字入力をしようとすると、物理キーボードの方が入力し易いためだ。例えば、iPad Pro 11\" (2018) と Smart Keyboard Folio を合わせれば765g位だ。1つ前の世代の iPad Pro 10.5\" と Smart keyboard では 715g位だ。物理キーボードの次に欲しくなるのがタッチパッドである。ところが、iPad にはマウスの概念が無く、文字列を選択してコピー&ペーストするには画面をタッチ操作する必要がある。Windows なら、タッチパッドポインターを操作して文字列を選択できる。最初から複数のウィンドウが表示され、処理もマルチタスクで動く。そのため、iPad + キーボードの総重量と同程度の重量で、外出先で資料の一部を修正したり、テキストファイルを作成したり、Excel の一部を修正するレベルをこなせる PC が在れば、iPad Pro に対するアドバンテージになる。そして、S モードを解除すればストア以外から入手したソフトウェアも実行できる点も重要だ。そこに照準を合わせたのが Surface Go だと言える。

Surface Go + タイプカバーを合わせると 767g だ。国内では世界最軽量モデルとして、13.3" ディスプレイ搭載、CPU は Core i7-8565U が採用された富士通の LIFEBOOK UH-X/C3 が、25Wh バッテリーモデルで 698g を実現している。比較的重いと言われる Macbook シリーズでも、Macbook が 12" ディスプレイ、41.4Wh バッテリー、Core i7-7Y75 搭載可能で 920g となっている。一方、iPad Pro 12.9" モデルでは Smart Keyboard Folio を合わせると 1031g となり、最軽量のノートブック PC よりも重くなる。この辺りがタブレットとノートブック PC が重なるマーケットとなり、マウス操作の有無で棲み分けられているのかもしてない。そうなると、Android タブレットが処理能力を上げてこのマーケットに入って来れば、Chromebook とも重なるようになり、かなり面白いことになりそうだ。

ぼやき

さて、個人的に思うところだが、CPU、メモリーとストレージの増強、USB Type-C での USB PD による充電ができ、Holo キーボードは据え置きで Yoga Book C930 が 8万円程度に収まっていたら買っていただろう。Yoga Book for Windows は、平面キーボードを採用し、ペンタブレットとしても使えるキワモノ的なモデルだったが、重さは 700g で厚さは 1cm 以下の PC が 5万円程度で購入できたことが良さだったと思っている。キーボードが汚れてもウェットティッシュで拭けばいいし、キーボードの入力音はしないところもいい。気軽に持ち歩ける大きさ、軽さ、薄さであり、クラムシェル型のため Suface Go に比べて設置面積が広くないのもよい。不満点は半年に一度の Windows 10 の大型アップデートに時間がかかり過ぎる点位だ。まぁ、用途はサブノート PC として割り切った使い方前提だが、iOSAndroid に比べれば、文字入力はし易い。キーボードの未来性を気に入ってはいるんだけど、ペン入力をほとんど使わない身としては、この 2画面ノートブック PC の価値と価格のバランスが許容できないでいる。

まとめ

  • Surface Go は(日本以外では)値段の割にバランスが良い
  • 実は iPad Pro は高コストパフォーマンス
  • Yoga Book C930 は値段を考えると残念
  • もっと安い Yoga Book 出してください

ThinkPad X1 Carbon のポートについて

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備忘録として、ThhinkPad X1 Carbon Gen 6 (2018) の本体側面のポート (保守マニュアルから抜粋) について、まとめてみた。

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ThinkPad X1 Carbon の左右のポート

USB-C コネクター (Thunderbolt 3 対応) / 電源コネクター

Thunderbolt 3 対応ということは、USB Type-C の Alternate Mode を使って伝送し、Display Port の信号を流すことができる。Intel の iGPU の仕様により、おそらく Display Port のバージョンは 1.2 であるらしい。Thunderbolt 3 アクティブケーブル使用時は(理論上の)最大転送速度は 40Gbps となる。Thunderbolt 3 パッシブケーブルでは 20Gbps となる。いずれもケーブル長は 1〜2mというのが限界らしい。

Thunderbolt 3 に対応しているため、USB 3.1 Gen 2 としても使用できると考えられ、最大転送速度は 10Gbps となるだろう。

この USB Type-C コネクターは2つあるが、どちらも電源コネクターとして動作するため、AC アダプターからはどちらに刺しても充電ができる。ケーブルは USB Power Delivery に対応したものを使用する必要がある。

純正の AC アダプターは 45W (20V 2.25A) と 65W (20V 3.25A) の2種類あり、両方とも USB-PD による電源となっている。当然、65W の AC アダプターでは1時間30分で90%までの充電するという。45W でもそれほど遅いわけでは無い。ちなみにバッテリー容量は 57Wh である。

携帯用には、ひとまわり小さく軽めの AC アダプターとして AUKEY USB充電器 PA-Y10 を使用している。USB Type-C Power Delivery ポート (Max 20V 2.3A) と USB Type-A ポート (Max 5V 2.1A) を同時に使用できる (合計 56.5W、ここ大事) ため、ThinkPad X1 Carbon とスマートフォンタブレットを同時に充電できるのが便利。充電用のケーブルは、StarTech.com L型 USB-Cケーブル (USB2CC1MR) を使用している。USB 2.0 なのでデータ用には使用しないが、充電時には ThinkPad X1 Carbon の横からケーブルが飛び出さないので散らかった感じがしなくて気に入っている。

注意:AUKEY USB充電器 PA-Y10 は、電圧の調整が上手くいかない動作をしているという記事がある。様子を見ながら使っているが、今のところは変な動作はしていないさそうだが、万人にお勧めはできない。

イーサネット拡張コネクター2

オプションのRJ45拡張コネクターを接続するポート。NIC 自体はチップセット上の物を使っている様子。そのため、MAC アドレスが ThinkPad と結びつくのがメリットだろうか。USB ドングルだと、機器ごとに MAC アドレスが変わるため、管理面では敬遠されるかもしれない。

私にとっては、RJ45拡張コネクターは汎用的では無いためオプションから外した。有線LAN接続が必要な場合は、既に持っている USB 3.0 (Type-A) の USB Gbps イーサーネットドングルを使って使用している。というか、今のところ巨大なファイルの転送はしていないので、無線 LAN の IEEE 802.11ac で間に合っている。

HDMIネクター

外付けディスプレイ接続用の HDMIネクター。バージョン 1.4 のため、4K ディスプレイ表示ではリフレッシュレートが 30Hz になり、動画やゲームには向かない。Thunderbolt 3 ポートからの Display Port 経由なら 4K 60Hz の表示が可能らしい。

今のところ、4K ディスプレイは持っていないので、特に問題なし。4K ディスプレイ購入時は、USB Typ-C コネクター付きのモデルを選択した方が良さそうだ。

USB 3.1 コネクター Gen 1

Lenovo の直販サイトの製品仕様では、「USB3.0」となっている。規格としては同じ規格である。最大転送速度は 5Gbps である。したがって、ThinkPad X1 Carbon の Type-A コネクターは、転送速度 5Gbps と覚えておけばよいだろう。

Always On USB 3.1 コネクター Gen 1

Lenovo の直販サイトの製品仕様では、「USB3.0 (Powered USB)」 という表記がある。AC アダプターを接続している状態なら、設定によって電源OFF時やスリープ中でもUSBポートから充電することができるポート。

ThinkPad X1 Carbon を充電中に、電源OFFでもスリープしていても、このポートを使ってスマートフォンタブレットが充電できる。旅行時や出張の際にスマートフォンタブレットを持って行く場合、このポートと AUKEY PA-Y10 を使えば、全部充電できるということになり、AC アダプターは1個で済む。

ミニ・セキュリティー・ロック・スロット

ケンジントンロック用のスロット。手持ちのケンジントンロックでも使用できた。

補足:USB 規格について

2013年8月に最大転送速度が 10Gbps の規格が策定され、USB3.1 Gen 2 となった。その際、従来の 5Gbps の USB3.0 は、USB3.1 Gen 1 と呼ぶように変わった。USB3.2 Gen 2x2 とか USB 4 とかも策定されており、従来の USB 3.0 関連の規格の名称も変わるらしい。USB 4 が一般的になるまでは古い名称も残るため混乱するだろう。

さらにややこしくしているのが、USB Type-C コネクターである。最初は USB3.1 用の規格だったのが、最近では USB 2.0 のものもあり、Thunderbolt 3 も同じだったりで、さらに Power Delivery のものもあったりで、分かりにくい。

整理のために、表にまとめてみた。

最大転送速度 最大供給電力 規格名 ネクター
12Mbps 5V ?mA USB 1.0、USB 1.1 Type-A、Type-B、(Type-C)
480Mbps 5V 500mA USB 2.0 Type-A、Type-B、Mini-B、micro-B、Type-C
5Gbps 5V 900mA USB 3.0 → USB3.1 Gen 1 → USB 3.2 Gen 1 Type-A (0-pin)、Type-B (9-pin)、micro-B SuperSpeed (9-pin)、Type-C
10Gbps 5V 1000mA USB3.1 Gen 2 → USB 3.2 Gen2 micro-B SuperSpeed (9-pin)、Type-C
20Gbps (USB PD ?) USB 3.2 Gen 2x2 Type-C
40Gbps (USB PD ?) USB4 Type-C ?

参考リンク

更新履歴

  • 2020/04/19 タイトルの先頭の "#" を削除
  • 2019/03/21 初出

Lenovo ThinkVision M14 が気になる

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Lenovo ThinkVision M14

デュアルディスプレイ

NWC 2019 で発表された Lenovo の「ThinkVision M14」が非常に気になる。EU で 249ユーロで6月に発売予定。日本でも発売されれば3万5000円位だろうか。

ディスプレイのサイズは 14" のため、ThinkPad x1 Carbon と同じで、解像度は 1,920x1,080(FHD) となっており、重量は 595g となる。接続は USB Type-C (DisplayPort 1.2 Alt Mode) で接続するが、USB PD にも対応している。そのため、下記のような接続方法に対応できる。

[ThinkPad X1 Carbon]---(USB Type-C)---[ThinkVision M14]---(USB Type-C)---[ACアダプタ]

もちろん、出先での下記のような接続形態も対応できる。

[ThinkPad X1 Carbon]---(USB Type-C)---[ThinkVision M14]

下記のような接続形態でも大丈夫。

[ThinkPad X1 Carbon]---(USB Type-C)---[ThinkVision M14]---(USB Type-C)---[モバイル バッテリー]

モバイル ディスプレイは既に幾つか製品が販売されているが、このモデルの良い点は、下記の点である。

  • 最低限、USB Type-C ケーブル一本で接続して使用できる。
  • USB Type-C のハブとしても使える。→ USB ドックのような使い方もできる。
  • コンセントがある場所では、ACアダプター経由で充電しながら使用できる。
  • 本体にスタンドが付いており、角度調節もできる。→ カバーをスタンドとして使うタイプは角度調整ができない。
  • 持ち歩く場合にもカバーがあるため、画面に傷がつかない。

出張や、出先での作業時にデュアル ディスプレイ環境を手軽に持ち出せることができるのがよい。

例えば ThinkPad X1 Carbon 6th と組み合わせて使用する場合、重量は 1.75kg (1.15kg+595g) となる。ACアダプタとケーブルも合わせると約2kg となる (純正 45W AC アダプターだと 170g、AUKEY PA-Y10 (46W) で 136g)。

参考として、MacBook Pro 15" モデルは単体で 1.83kg となっている (ちなみに 87W ACアダプタは 296g)。同じ 2kg なら、2画面あった方が効率が良いのではないだろうか?

あるいは、自宅で充電ケーブル付きのUSBドック+ディスプレイの構成で使うか?

ひょっとして iPad Pro 2018 でデュアル ディスプレイになる?

気になる。

参照:

ThinkPad X1 Carbon 6th (2018モデル) を購入した

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ThinkPad X1 Carbon 6th (2018 model)

購入機種

前回述べた Yoga Book with Windows のパフォーマンスへの不満の解消に対する解答として、同じく LenovoThinkPad X1 Carbon 6th-Gen (2018 モデル) を購入した。

ThinkPad X1 Carbon は第5世代の 2017 年モデルからベゼル幅が狭くなり、14" ディスプレイを搭載しつつ、以前の 13.3" ディスプレイのモデルと同じ大きさになった。現に、現在市販されている一般的な 13.3" ノートブック PC 用のケースに収まるようだ。さらに、重量も若干軽くなり、1.15 kg である。ところが、12.5" ディスプレイモデルである ThinkPad x280 もほぼ同じ重さで、ひとまわり小く、価格も幾分低くなっている。x280 にするか少し迷ったが、私にとっては、キーボードに Home/End/Insert キーが独立している点が差別化のポイントになるため、ThinPad X1 Carbon を選ぶことにした。普段、デスクトップ PC で使用しているトラックポイントキーボードとキー配置と大きさがほぼ同じとなるのもポイントが高い。ThinkPad X1 Carbon の第7世代 (2019 モデル)も既に発表されているが、2019年9月以降の発売を予定しているため、そこまで待つことはできず、第6世代 (2018 モデル) の購入を決めた。

スペック

購入した ThinkPad X1 Carbon の主要スペックは下記のとおり。

  • CPU : Intel Core i5-8250U (4core/8threads, 1.6-3.4GHz)
  • Memory : 8GB
  • Storage : M.2 2280 SATA SSD 128GB
  • Display : 14" QWHD IPS (光沢なし)
  • Scurity : 指紋認証あり、生体顔認証なし
  • LTE : なし

ストレージは足りなければ換装するつもりである。SATA で 512GB もあれば十分だろう、直販サイトでのカスタマイズ時の差額 ¥35,000 以下なら換装した方が安い。NVMe タイプは消費電力が多いため、避けるつもりである。速度よりバッテリー稼動時間を優先したい。CPU は Core i5 を選択した。第8世代となって大幅に性能が上がり、Core i7 とは劇的な性能差はない。Core i5 モデルを選択したので、メモリーは上限の 8GB とし、全体的にコストパフォーマンスを優先した構成にしている(Core i5 でも16 GB 積められると良いのだが)。RJ45 拡張コネクターは手持ちの USB 3.0 LAN アダプターがあるので外した。OS はリモートデスクトップが使いたかったのと、Hyper-V があれば Docker が使えるため、Windows 10 Pro を選択した。納期を早めたかったので米沢モデルでオーダーした。

上記の構成で e クーポン適用後 ¥151,016 だった(2019/01/14)。ちなみに、Yoga Book c930 の m3/Wi-Fi モデルは e クーポン適用後 ¥122,653 で約3万円の価格差である。今回は、10" サイズのフットワークの軽さより、キーボードの入力のしやすさを優先した。参考までに ThinkPad x280 で同様の構成を取ると e クーポン適用後 ¥127,510 で約2.5万円の価格差である。

使用感

久しぶりに ThinkPad を触ってみたが、キーボードは期待通り打ちやすい。意外だったのは、以前に比べてトラックパッドを良く使うようになっていたことだった。最近は Yoga Book を使うケースが多かったためだろう。

また、Lenovo Vantage が便利だ。ドライバーを最新の状態に保つのが楽である。

赤外線カメラは搭載していないので顔認証はできないモデルだが、指紋認証はできるので、ログインも楽だ。 ただし、1ヶ月程使っているが、Web 上のレビュー記事で指摘されているように、指紋認証に失敗する様になった。以前は1回で成功していたので、指紋認証の精度が落ちたのだろうか?

そこで、指紋の再登録をしてみたところ、認識率が元に戻った。再登録は「スタート」→「設定」→「アカウント」→「サインイン オプション」→「指紋認証」で一旦「削除」を押下し、「セットアップ」で実施した。指紋認証の機能は Windows 10 になってから Windows Hello の機能として実装されている様子。今後、Windows Update が行われたら指紋の再登録を行なった方が良いかもしれない。

14" の QHD ディスプレイは期待通り美しく、文字のジャギーが目立たない。現在、DPI スケーリングを 125% に設定して使用している。

実際に手に持ってみると、大きさの割に軽く感じた。Macbook Air (2015 モデル) と比べて、大きさはほぼ同じで 200g 軽い。もちろん、Yoga Book に比べれば重い。そして、持ち歩いてみたところ、重さはそれ程気にならないが、大きさの方が気になった。Yoga Book を持ち歩く場合は、それ程鞄の大きさに悩まない。Yoga Book はケースに入れた状態で patagonia のライトウェイト トラベル クーリエに丁度入る大きさで、ちょっと外出するついでに持ち歩ける感覚だ。Surface Go がそれなりに受け入れられるのは、この大きさと重量の点があるだろう。一方で ThinkPad X1 Carbon はひとまわり大きいサイズの鞄が必要になる。patagonia のライトウェイト トラベル トート バッグがちょうどいい感じだ。カンケン バッグだとやや小さい。2年ほど前の 13" ノートブック PC と同じくらいの大きさなので、PC ケースは、現物確認すれば選択肢は案外多いことが分かった。

さて、喫茶店に持ち込んで使ってみると、やはり場所を取る。ドトール コーヒーやコメダ珈琲店の2人用の席のテーブルを使うと、横にコーヒーカップは置けず、裏に置くことになる(カウンター席だともう少し広いため、コーヒーを横に置くこともできる)。そういったデメリットが有るが、デスクトップ PC で使っているのと殆ど変わらないキーボードで入力ができ、4年前のデスクトップPCよりも高い処理能力を持ち運べてしまうメリットが有る。場所さえ確保できれば、申し分ない環境で作業できるのである。我慢しなければならない点が少なくなるのがサブノートPCとの違いだろう。これが Surface Pro だと後ろにスタンドがあるため、狭いテーブルではコーヒーを置く場所が無くなってしまいそうだ。

先日、金沢へ旅行で行ったが、往復でグリーン席車両を使用した。グリーン車のテーブルでは、左右に数センチの余裕がある状態で、空いたスペースにはペットボトルは置けない位だった。幸い、肘掛けにカップホルダーが有ったので、それを使用した。東海道新幹線では肘掛けにカップホルダーが無いため、使いにくいかもしれない。社内では問題なくキーボードは打てたし、トラックポイントの操作もできた。ただし、東京~大宮間は揺れが酷くて、打ち間違えそうだった。とは言え、この区間Wi-Fi が使用できた。それ以外の区間は使える区間はあるが低速で、トンネル内では切断されるため不便だった。今回は、新幹線の乗車中ほぼ2時間半の間、Ruby on Railsチュートリアルを実施していた。

バッテリーでの稼働時間について比較してみる。Yoga Book with Windows では Ruby on Rails チュートリアルを実施していたところ、約7時間後にバッテリー容量が20%以下の警告が表示された。ThinkPad X1 Carbon で同様に Ruby on Rails チュートリアルを実施した場合は、約10時間後に残り20%の警告が表示された。

仕様では、Yoga Book with Windows のバッテリー容量は 8500mAh、一方、ThinkPad X1 Carbon は 57Wh となっていて単位が異なるため単純比較はできない。コマンドプロンプトを開いて、powercfg /batteryreport を実行した結果も含めて比較すると、下記のようになる。もちろん、CPU やストレージが異なるので参考程度だが、まだ1ヶ月程度しか使っていないにせよ、ThinkPad X1 Carbon は Ruby on Rails チュートリアルの実施程度の負荷であれば、ほぼ終日作業ができる程度のバッテリー運用ができることが分かった。

Installed batteries Yoga Book for Wndows ThinkPad X1 Carbon
DESIGN CAPACITY 32,984 mWh 57,000 mWh
FULL CHARGE CAPACITY 28,211 mWh 56,800 mWh
Ruby on Rails Tutorial 7 hours 10 hours

powercfg /BATTERYREPORT 参考:【安心】バッテリーレポートでPCのバッテリーの実力と寿命を知る方法

パフォーマンス

WSL での Ruby on Rails チュートリアルの実装作業は Yoga Book に比べて、期待した程速くはならなかったのが残念なところ。

性能比較として、Basemark Web 3.0 を使用してみた。Basemark Web 3.0 のスコアで比較すると、下記のようになる。基本は Chrome で測定しているが、iPad Pro のみ Safari での計測である。

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Basemark Web 3.0 での比較

Basemark Web 3.0ブラウザー上で実行するベンチマークソフトであるため、ディスクIOなどは反映されないが、使用頻度の高いブラウザーの能力を他のPCと同一条件で比較できる。インストールが不要のため、家電量販店でも試すことができる。iPad Pro は Safari で実行できたのだが、Yoga Book c930 と Surface Go では、Edge でテストの実行はできるがスコアが表示されない(スコアが N/A)という結果になり、比較できなかった。

グラフで分かるように、Yoga Book with Windows は 8" タブレット(ZenPad 3 8.0)にも負ける程の能力であることが分かる。ベンチマーク自体がグラフィック性能に強く依存している背景もあるが、結果を見て少々凹んだ。また、Apple の謳い文句通り、iPad Pro 2018 のスコアが ThinkPad X1 Carbon よりも高くなっているのが興味深い。自作 PC では、現在使用しているグラフィックボード付きのモデルが最速であるという結果になった。Basemark Web 3.0 は手軽に試せるベンチマークソフトとして、今後も活用するつもりだ。

実際に Rails の開発でのパフォーマンスの比較もしておく。第10章を完了した時点で time rails test を3回実行して、実行時間を比較してみた。ほぼ同じ条件で比較するため、一旦 PC を再起動し、WSL の Ubuntu を起動した状態でテストを実行している。実行結果は下図のようになる。

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Ruby on Rails Tutoral でのテスト実行速度の比較

どちらも1回目のテスト実行時は実行時間が長いが、ThinkPad X1 Carbon は Yoga Book for Windows の約半分の実行時間となっている。まあ、価格が約3倍なので、1/3 倍の実行速度となってくれたら嬉しいが、半分の実行速度でもまずまずといったところか。条件が異なるため単純比較はできないが、Basemark Web 3.0 のスコア程の差は出て来ないのは、Rails のテストではおそらく GPU の能力は使用せず、CPU も1コアのみの処理となっているためではないかと考えられる。

パフォーマンスと言えば、年に2回ある Windows の大規模な Update の適用に非常に長い時間を要するのが Yoga Book を使用する際の不満だ。来る4月の Windows の大規模な Update の適用時間が Yoga Book と ThinkPad X1 Carbon でどれほど違うか、比較する予定。

補記

ThinkPad x390 が発表された。ついに x2XX シリーズが 13" ディスプレイに全面更改となった。重量は 1.28kg と ThinkPad X1 Carbon 6th より約100g重い。大きさは横幅が ThinkPad X1 Carbon 6th より 1cm 狭い程度。ThinkPad x390 が微妙な位置付けになっている。x280 ほど軽くも小さくもなく、X1 Carbon より幅が若干狭いだけで重い。あとは価格がどの程度安く設定されるか。まあ、ThinkPad X1 Carbon を買った身としてはあまり気にならない。

まとめ

  • ThinkPad X1 Carbon は快適に使える。
  • Yoga Book のコンパクトさのメリットを再認識した。
  • パフォーマンスは悪くないが、iPad Pro に負けるのは悔しい。

ThinkPad X1 Carbon はディスプレイも十分広く、メインとしての使用にも耐えうる PC である。最軽量と言うわけではないが、持ち歩いてもその重さが負担となることはないだろう。ノートブック PC の中で最も打ちやすいキーボードが搭載されたノートブック PC を持ち歩きできることは、外出先での作業中のストレスを軽減してくれる。そして、14" サイズの QWHD 液晶は文字が綺麗に表示され、読みやすくなった。

情報端末構成

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主に、家庭での各種情報機器の中の Yoga Book の立ち位置について考えてみた。

情報端末構成

一般的なスマートフォンは、150g 程度であったが、最近は画面の大型化に伴い、200g 近くまで重くなってきている。現在、私が使用しているスマートフォンXperia XZ2 Compact で 5" ディスプレイの 168g だ。これにストラップホール付きのケースを付けているので、200g 弱というところ。以前に比べて多少重いなと感じる。片手操作では 150g 前後が理想的だ。スマートフォンは、常時持ち歩く情報端末である。通話やメールやチャットを移動中に行える。ちょっとした調べ物やメモ書きや財布替わりにも使える。私の場合では、タブレットを併用するので、画面サイズはそれ程大きい必要はなく、軽くて大きすぎないことが優先される。電車移動時など、立った状態で使うことが多い。

次に、8" タブレットがある。ASUS ZenPad 3 8.0 で、320g である。ケースを付けているので、350g 程度だろう。片手で保持するのは、350g が限界だと思う。基本的に片手で保持して、もう片方の手で操作を行う。また、これとは別のタブレットがあり、Apple iPad Air を使っていた。こちらは 9.7" ディスプレイで 470g である。片手で保持は無理がある。両手で保持するか、膝の上やテーブルに置いて使うことになる。手軽に持ち歩けないので、現在ばかり ZenPad をメインで使用中。外出時は、Google Map での位置確認や、レストラン探しなどで活躍中。スマートフォンでは老眼には少々キツい。タブレットは外出先での地図の確認や、電子書籍の読書や、ブラウザーで調査しながらブログ記事をまとめたり、アイデアを文章化したり、動画を見たり、といった作業に使用する。タブレットの操作は両手が塞がるため、椅子に座るか、寝転がって使うことが多い。画面サイズは 8"、重量は 350g 以下が今のところベストなバランスである。10" サイズは重量が増すため、追加であってもいいが、どちらか一つであれば 8" サイズを選ぶ。8" タブレットは、移動時のメインとなる情報端末である。

その次に、Lenovo Yoga Book with Windows が来る。10" ディスプレイで、700g である。コメダ珈琲店での Ruby on Rails チュートリアルの実施に使用中。以前は、Apple Macbook Air 13" (1.35kg) や、Lenovo ThinkPad x230i 12.5" (1.5kg) を仕事で持ち歩いていたので、約半分の重さである。スリーブケースと合わせても 800g 位だし、AC アダプターを足しても +90g である。ノートブック PC を持ち歩いていると考えると、これまでの本体のみで 1.3kg 以上に比べれば、ズッシリ感が無く気軽に持ち歩ける。これはサブノート PC である。移動時に座席とテーブルが確保できる環境で使用する。タブレットではできない作業を行う。私の場合は、開発が主な用途となる。移動時の負荷を下げるため、800g 以下と言うのが目安となる。画面サイズは大きい方が見やすく情報量も増えるため望ましいが、大きすぎるとかさばるため、10~14" と行ったところか。

この上に来るのが、13~16" クラスのノートブック PC だろう。現在の私の環境にはない。ほぼメインで使用できるスペックで、常時持ち歩くのは苦痛だが、持ち運べないことはない、といった位置づけだろうか。昨今、一般家庭でのメイン PC ともなっている。デスクトップ PC がある場合は、サブノート PC にその場に譲るケースも多かろう。仕事専用機といった使い分けのために導入する場合もある。

最後に、デスクトップ PC である。大画面で大容量ストレージを持ったメイン PC である。自宅に専用のスペースが必要となり、持ち運びはできない。その分、最強のスペックで構築可能で、自分にとって最高の作業環境を整えられる。この環境があれば、移動時用にサブノート PC があれば事足りるケースが多い。

オプションで、NAS がある。最近は安価に大容量の HDD で RAID 構成を取った NAS を導入しやすくなった。主にバックアップや、スマートフォンタブレットの追加ストレージとしても用いられる。通常はディスプレイやキーボードは持たず、ブラウザーなどから管理する。中味は Linux+Samba という構成が多く、人によっては馴染みやすい。

さて、一般的な情報端末の構成について考えてみよう。

最小限の構成は下記のようになる。

早ければ、小学生からスマートフォンを持っているケースもあるだろう。個人の持つ情報端末として、最初に持つのがスマートフォンだろう。家庭によっては、子供が最初に触れる情報端末がタブレットというケースもあるだろうか。

次に、考えられる構成が下記になる。

主に、大学生や、社会人がこの構成で使用しているだろう。デスクトップPCに比べて、場所を取らない構成だ。必要な時にノートブックPCを机に出して使うというものだ。ノートブックPCは、恐らく 13" クラスのモバイル型で、大学やオフィスでの使用と自宅での作業を兼用させるだろう。バックアップ用に外付けのHDDや、場合によっては、NASを使うことになるだろう。

PC でゲームをしたり、大画面で作業したい人は、下記の構成となるだろう。

この構成の場合は、ノートブックPCが 13" 以下のサブノート型で十分という人も多いだろう。重い作業はデスクトップPCでできるため、持ち歩きはサブノートにした方が身軽だ。ここまでの構成の場合、スマートフォンは画面サイズが大きい物を選ぶケースが多いだろう。ある程度のことはスマートフォンで済ませようと考えていると思われる。デスクトップPCは、家族で共用というケースも多いだろう。その場合、クラウドサービスも家族用のアカウントを共用すると思われる。お父さんがムフフな画像の保存について苦慮する構成でもある。

スマートフォンでは画面が小さいが、ノートブックPCを使うほどではない作業に興味が行くと、下記の構成になる。

タブレットの登場だ。スマートフォンより大きい画面で、座ったまま、あるいは寝転がった態勢でWebサイトを見たり、読書したり、ペンで絵を描いたり、ゲームをしたり、といった使い方ができる。8" サイズのタブレットなら、気軽に外出時も持ち出せる。この構成になると、スマートフォンの画面サイズはそれ程大きくなくて良い。むしろ、小さく軽い方が良いだろう。タブレットは、使用アカウントに強く紐付けられるため、余裕があれば一人1台持つことになるだろう。ノートブックPCは、個人で仕事用としている使うケースが殆どだと思われるので、一人1台持つことになるだろう。

ガジェット好きだったり、用途毎にPCを独立して持つ場合は下記の構成になるだろう。

フルセットだ。当然、バックアップ用に NAS にも手を出しているだろう。ここまで来ると、用途によって使用するデバイスが異なり、作業し易いデバイスを選択できる様になる。一方で、ケーブルやOSのアップデートに手間取る様になる。昨今では NASの変わりに大容量のクラウドサービスストレージを利用するユーザーも増えて来ている。NAS 構築費用と使用料金との比較で、どちらが有用かを決めればよい。両方あれば、災害時対策にもなる。

現在の私が、この構成に近い。サブノートPCとして Yoga Book があり、ノートブックPCの代わりに複数台のデスクトップPCを使っている。NAS とは有線LANで接続している。NAS には Intel CPU 搭載のモデルを選択し、Docker でいろいろ試そうと考えている。

YOGA BOOK の立ち位置

YOGA BOOK with Windows は、私の情報端末の構成のなかでは、タブレットより上で、ノートブックPC(デスクトップPC)より下に位置する情報端末である。現在は、何処でもできる Ruby on Rails チュートリアルの開発用に使用しているが、パフォーマンスに不満を持っている。この不満を解消するにはどうすれば良いだろうか?

旧モデルから、新モデルの YOGA BOOK c930 になって CPU が Atom から m3/i5 に向上、eMMC から SSD への向上、ストレージ容量の増加が行われ、かなり実用的になって来ている。RAM 容量の8GB化と 11" ディスプレイ搭載、m3 CPU と 128GB SSD で 8 万円以下となれば、理想的なサブノート PC となる。

Surface Go も RAM 8GB/SSD 128GB のモデルは良い線を行っている。LTE モデルが Office なしで値段据え置きで出てきたら、化けるかもしれない。Serface Laptop Go なんて出てもいいんじゃないだろうか。

富士通 LIFEBOOK WU2/C2 は 13.3" ディスプレイを搭載しつつ、800g 以下を実現している。CPU に i7 も選択できる。その分価格も高く、11 万円超となる。

NEC LAVIE Direct HZ は 13.3" ディスプレイを搭載し、コンバーチブル型で 800g 以下を実現している。こちらも 11 万円超となる。

パナソニック Let's note RZ6 は 10.1" ディスプレイを搭載し、800g 以下を実現している。m3 モデルで 15 万円超。

値段が 15 万円超となると、YOGA BOOK c930 と同程度になってくる。Let's note は国産の良さがある一方で、YOGA BOOK c930 は未来感がある。LIFEBOOK や LAVIE は、それより安くなるが、トラックポイントが付いていない。そして、15万円超となると、Lenovo ThinkPad X1 Carbon も視野に入って来る。ThinkPad X1 Carbon はキーボードとトラックポイントの使いやすさは極上で、画面サイズは 14" と広くなるが、重量は 1.15kg になってしまう。これは YOGA BOOK の 1.5 倍で、丁度 YOGA BOOK と 8" タブレットを合わせた重さである。さらに、この価格帯には、13" レベルで 1.3~1.5kg といった、従来のモバイル PC のモデルが多く存在する。

Windows 10 の稼動する PC の標準スペックは、CPU が i3/i5 クラス、メモリー 8 GB、SSD 128GB 以上であろうと考えている。このスペックなら 5 年は持てるだろう。LIFEBOOK と LAVIE はこの標準スペックをクリアしつつ YOGA BOOK に比べて、画面サイズが大きい。しかし、画面サイズが近いという理由で ThinkPad X1 Carbon も候補に挙がってしまう。また、価格面では、Let's note は、ThinkPad X1 Carbon と同じか少し高くなる。他のモデルだと、プラス3万円で ThinkPad X1 Carbon が買える値段だ。1.15kg が許容できれば、私にとっては ThinkPad X1 Carbon が一押しのモデルとなる。画面サイズが広い点と、デスクトップで使用しているトラックポイントキーボードとほぼ同じキー配置のキーボードを備えている点、トラックポイントが付いていることが最大の理由だ。黒い四角に赤丸ポッチのデザインも、落ち着いた中に嫌味のないアクセントとなっていて好ましい。ただし、ひとまわりサイズの小さい ThinkPad x280 も俎上に上がってしまう。

YOGA BOOK with Windows の尖った未来的なコンセプトと、貧弱なスペックが一体となり、当時は5万円台で入手できた。この価格の低さも十分な購入動機となっていた。一度この軽さと薄さを体験すると、サブノートPCのフットワークの軽さは魅力となる。しかし、処理能力を上げようとすればコストが高くなり、同じような価格でモバイル型のそこそこのモデルが買えてしまうことが選択肢を広げてしまい、決められない状況が続いている。悩ましくもあり、楽しくもあり。

パフォーマンス以外の点では、私にとって、YOGA BOOK with Windows はサブノート PC としての理想に近い。この不満点への解答は、次回の投稿で紹介する。