dhtakeuti’s thoughts

主に開発やPCについて考えたこと、感じたことの記録

ノートブックPC ベンチマーク結果の更新

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以前、気になる機種についてベンチマークの測定結果を載せたが、その後、追加で幾つかの機種を使って計測したので結果を紹介する。

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ベンチマーク対象を追加

ベンチマーク結果

使用しているベンチマークツールは、引き続き Basemark Web 3.0 を使用している。Edge では総合スコアが計測できなかったため、PortableApps Chrome をダウンロードして実行した。Surface Go は、店によっては展示されている機器の Windows 10 Home が S モードのままで、 Chrome が実行できない。別の店では S モードが解除されていたので、ベンチマークを計測する事ができた。

Yoga Book は2代目となり、パフォーマンスは約2倍に向上していることが確認できた。単純に CPU が増強された結果であることが推測できる。ただし期待よりは向上していない。

一方で、意外だったのが Surface Go のスコアである。CPU が Pentium Gold 4415Y で、Yoga Book C930 の Core i5-7Y54 と比べてグレードが低いのだが、ベンチマークスコアでは上回っている。これは Pentium Gold 4415Y ではターボブーストがなく標準の 1.6GHz で動作しているが、一方の Core i5-7Y54 ではターボブーストなしの 1.2GHz で動作していたとしたら、逆転していることが説明できる。ターボブーストがかかっていれば 3.2GHz で Yoga Book C930 の方が速くなるかもしれない。ちなみに、グラッフィックエンジンは Intel HD Graphics 615 で同じだ。Surface Go は US で評判が良かったらしいが、ベンチマーク結果から見ても、サブノート PC としてはそれなりに使えるモデルと言える。

日本国内ではモバイル用途のノートブック PC は 1kg 未満のモデルが各社から販売されており、13.3" で Core シリーズの CPU を乗せて 900g 以下というものも選択できるようになった。これらの軽量モバイルノート PC では U タイプの CPU が使用されており、能力的には ThinkPad X1 Carbon と同等と思われる。

コストパフォーマンス

ベンチマークの結果を元にコストパフォーマンスを見てみる。今回は、Basemark Web 3.0 のベンチマークスコアを費用で割った値を指標にするが、単純に円単位にすると値が小さすぎるため千円あたりのベンチマークスコアで比較してみる。結果は以下のようになる。

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コストパフォーマンス比較

まず、Yoga Book C930 が Yoga Book with Windows よりも値が低くなっていることが分かる。これは、Yoga Book C930 での E-Ink がコストを押し上げているのだろう。そして、Surface Go と ThinkPad X1 Carbon の値が近いのも興味深い。ちなみに Surface Go は、タイプカバーとの合計額で計算している。LG GRAM も若干低いが、近い数値になっている。おそらく、標準的なノートブック PC では、3.0 程度になると思われる。一方、ThinkPad X1 Extream がさえない値となっている。GPUBTX 1050Ti を奢った割にベンチマークスコアが振るわなかったため、コストパフォーマンスは低いという結果となった。また、iMac Pro はベンチマークスコアは高かったが、ディスプレイ込みのコストパフォーマンスでは Yoga Book with Windows 以下となってしまった。対して、HP OMEN ではベンチマークスコアも高かったが、コストパフォーマンスでもずば抜けた値となっている。また、iPad Pro も非常にコストパフォーマンスが高い。Android 端末の2台もコストパフォーマンスとしては高い値を出している。

ここで使用しているベンチマークテストは、ブラウザーでの Web ページの表示能力に偏っている。そして、Surface Go と Yoga Book C930 と比べると、値に2倍の開きがある。この2つの PC は、両方とも 10" ディスプレイを持ち、タッチパネルがあり、ペン入力ができる。違いは、Yoga Book C930 には E-Ink のディスプレイが余分についているという点のみといっても良い。両面でペン入力がある Yoga Book C930 が約1.5倍の値段になるのは仕方がないとも言える。つまり、ペンタブレット付きのノートブック PC としてこの価格差を許容できるかというのが購入時の判断となる。そこで、ワコムペンタブレットの価格を調べてみたところ、13.3" のディスプレイ付きのモデル Cintiq 13HD では ¥66,634 だった(Amazon)。これを Surface Go に追加すると、Yoga Book C930 の値段より1万円ほど高くなり、コストパフォーマンスは 1.90 スコア/千円となった。ただし、このペンタブレットは本体のみで 1.2kg あるため、Suface Go + タイプカバー + ペンタブレットで総重量は 522g + 245g + 1,200g =1,967g となる一方、Yoga Book C930 は 775g である。10" のペンタブレットとノートブック PC が一体となって 775g に収まっていることに Yoga Book C930 の価値があると言えよう。

そして、タブレット、および、スマートフォンのコストパフォーマンスの値が一般的な PC に比べて高くなっている。それだけ Web ページの表示を始め、閲覧の処理にチューニングされていると思われる。そんな中で、ペン入力による静止画作成だけでなく、動画編集、フォトレタッチ、文字入力などの、従来は PC が負っていた制作の能力にもターゲットを据えてきた iPad Pro は底知れない。これでマウス操作までできるようになったら、PC の置き換えが進むのではないだろうか。

Surface Go について

米国や欧州では PC が軽いことはマイナスのイメージが湧くらしく(参考:ITmedia NEWS - 高級路線のノートPC、アルミが使われるのはなぜ? (1/2))、多少重くても頑丈なモデルの方が好まれる(と思われている)様だ。Macbook シリーズの様に主力のモデルではアルミの削り出しで 1.3kg 程度なら軽い方だと言うらしい。他のアジア諸国については分からないが、主な通勤手段が電車と徒歩である日本国内の都市部の人にとっては、持ち歩くノートブック PC は軽ければ軽いほど良い。ただし、満員電車での圧迫に耐えられる強度を持つことは求められる。そういう状況で、Microsoft から全世界を対象として Surface Go を販売したことで、モバイルノート PC のトレンドが変わるかもしれない。

それにしても、何故、日本マイクロソフトSurface Go に Office をプリインストールしたモデルのみを一般販売したのだろうか?しかも、初代モデルは Office 2016 で数ヶ月後には Office 2019 に置き換えられている。初代モデルの購入者はバージョンアップしたのだろうか?Office が無ければ、下位モデルは5万円台で出せたのではないだろうか。確かに、最近は Yoga Book C930 でも家電店では Office 付属モデルも出しているようで、日本では Office のプリインストールのサブスクリプションなしの販売形態が主流であることがうかがえる。

10年ほど前に、ASUS EeePC を始めとするネットブックというのが全世界的に売れたことがあった。スペックは Windows XP が稼働する最低限のレベルではあったが、当時はノートブック PC が20万円が当たり前の所に6万円以下で購入できたのだ。ディスプレイは 7\"~9\" で、重さは約1kg だった。Surface Go は、当時のネットブックを思い出すが、マシンスペックはずっと高い。メインで使用する PC が有れば、サブノート PC として外出時に使用するには十分である。

Surface Go で使用されている Pentium Gold はノートブック PC では殆ど使われていない。低価格で低能力だが消費電力も少ない Atom か、やや高額でコア数が多いが消費電力も増える Core モデルの低電圧版が採用されるのが主流だった。今回のベンチマーク結果から、Surface Go は(日本以外では)低価格ではありつつ、従来の Atom 採用のノートブック PC の倍近い処理能力を持っていることが分かった。スマートフォンよりも生産性は高く、通常のノートブック PC より持ち歩きの負担は少なく、Windows が動く PC にターゲットを絞り込んでバランス良く纏めたのが Surface Go と言える。なるほど、iPad をライバルとして見ていることも、ターゲットを考えたら納得する。

インターネット上でレビュー記事を読んでいると、殆どの人が iPad Pro に Smart Keyboard Folio を付けたり、Bluetooth キーボードを一緒に持ち歩いている。文字入力をしようとすると、物理キーボードの方が入力し易いためだ。例えば、iPad Pro 11\" (2018) と Smart Keyboard Folio を合わせれば765g位だ。1つ前の世代の iPad Pro 10.5\" と Smart keyboard では 715g位だ。物理キーボードの次に欲しくなるのがタッチパッドである。ところが、iPad にはマウスの概念が無く、文字列を選択してコピー&ペーストするには画面をタッチ操作する必要がある。Windows なら、タッチパッドポインターを操作して文字列を選択できる。最初から複数のウィンドウが表示され、処理もマルチタスクで動く。そのため、iPad + キーボードの総重量と同程度の重量で、外出先で資料の一部を修正したり、テキストファイルを作成したり、Excel の一部を修正するレベルをこなせる PC が在れば、iPad Pro に対するアドバンテージになる。そして、S モードを解除すればストア以外から入手したソフトウェアも実行できる点も重要だ。そこに照準を合わせたのが Surface Go だと言える。

Surface Go + タイプカバーを合わせると 767g だ。国内では世界最軽量モデルとして、13.3" ディスプレイ搭載、CPU は Core i7-8565U が採用された富士通の LIFEBOOK UH-X/C3 が、25Wh バッテリーモデルで 698g を実現している。比較的重いと言われる Macbook シリーズでも、Macbook が 12" ディスプレイ、41.4Wh バッテリー、Core i7-7Y75 搭載可能で 920g となっている。一方、iPad Pro 12.9" モデルでは Smart Keyboard Folio を合わせると 1031g となり、最軽量のノートブック PC よりも重くなる。この辺りがタブレットとノートブック PC が重なるマーケットとなり、マウス操作の有無で棲み分けられているのかもしてない。そうなると、Android タブレットが処理能力を上げてこのマーケットに入って来れば、Chromebook とも重なるようになり、かなり面白いことになりそうだ。

ぼやき

さて、個人的に思うところだが、CPU、メモリーとストレージの増強、USB Type-C での USB PD による充電ができ、Holo キーボードは据え置きで Yoga Book C930 が 8万円程度に収まっていたら買っていただろう。Yoga Book for Windows は、平面キーボードを採用し、ペンタブレットとしても使えるキワモノ的なモデルだったが、重さは 700g で厚さは 1cm 以下の PC が 5万円程度で購入できたことが良さだったと思っている。キーボードが汚れてもウェットティッシュで拭けばいいし、キーボードの入力音はしないところもいい。気軽に持ち歩ける大きさ、軽さ、薄さであり、クラムシェル型のため Suface Go に比べて設置面積が広くないのもよい。不満点は半年に一度の Windows 10 の大型アップデートに時間がかかり過ぎる点位だ。まぁ、用途はサブノート PC として割り切った使い方前提だが、iOSAndroid に比べれば、文字入力はし易い。キーボードの未来性を気に入ってはいるんだけど、ペン入力をほとんど使わない身としては、この 2画面ノートブック PC の価値と価格のバランスが許容できないでいる。

まとめ

  • Surface Go は(日本以外では)値段の割にバランスが良い
  • 実は iPad Pro は高コストパフォーマンス
  • Yoga Book C930 は値段を考えると残念
  • もっと安い Yoga Book 出してください