dhtakeuti’s thoughts

主に開発やPCについて考えたこと、感じたことの記録

HP Stream 11-ak0000 は現代のネットブック

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HP Stream 11-ak0000 (製品写真)

ThinkPad X1 Carbon (2018)は持っているのだけど、持ち歩きにはちょっと大きい。そこで、もう少し小さいサブノートPCが欲しくなった。

機種選択

Yoga Book C930は大きさも重さも丁度良いのだが、マシンスペックと価格のバランスが悪い。電子ペーパーのためにプラス7万円は出せない。

Surface Goはマシンスペックと価格のバランスは良い方だが、それでもキーボードを含めると安くない。

5万円位で11インチのディスプレイのモデルがないか探していたら、LenovoIdeaPad 130S(11)を見つけた。価格は5.5万円で、CPUはIntel Celeron N4000、メモリー 4GBと標準的だが、ストレージがSSD 128 GBで M.2 SATAらしく、換装もできそうと云うので買おうかと思ったら在庫無しだった。

同じ位のスペックで探してみると、CPU Celeron N4000、メモリー 4GB、eMMC 64GBで5万円位だった。その中で見つけたのが、HP Stream 11-ak0000で、期間限定で ¥29,500(税込)だった。マシンスペックで考えると安めである。重さは1kgで、辛うじてThinkPad X1 Carbon (2018)より軽い。ちなみに他のモデルは値段が高い割に重量は1.1〜1.3kgだった。

同じ価格帯で14インチ ディスプレイのモデルもあるが、それだと ThinkPad X1 Carbonと被るので除外した。

一週間位悩んだ後、購入した。

購入したのは Amazon からで、2020/02/17に注文、2020/02/21 に受取。購入時は2週間程度の納期だったが、実際は4日で届いた。

製品情報:[HP Stream 11-ak0000] [Amazon]

使用目的

使用目的は、外出時に喫茶店などでのコーディングに使用するためである。ThinkPad X1 Carbonでやれば良いじゃないか?と自分でも思ったのだが、いやいや、盗難とかあったらダメージが大きいよね、などと理由を付けて購入に至る。

Dockerも試せるように、素のLinux環境が欲しかったというのもある。これも、Windows 10でDocker fo WindowsやWSLを動かせば実現しそうだが、素のLinux環境の方がDockerを動かすにはオーバーヘッドが少ないし、Linuxでの運用が学べる。

コーディングはVisual Studio Codeで行って、テスト環境は Docker で構築すれば、移行もし易い筈だ。これを持って出先でRuby on Railsやnode.jsのアプリを作ろう。

そう考えたのだった。

環境構築

HP Stream 11-ak0000 が届いて直ぐにWindows 10 Home (Sモード)の初期設定をして稼働確認を実施した。この時点で Windows 10のSモードを解除して回復ドライブの作成と、バックアップツールでシステムドライブのバックアップイメージの作成を行った。その後、回復用ディスクの作成が出来なかった。試したのはParagon Backup & Recovery フリー版である。EaseUS Todo Backupフリー版も同様だったのでClonezillaを使用する事にした。

Clonezilla以外のツールではイメージを外部ディスクに作成できるが、復元用のドライブを作成できなかったため、ディスク全体をLinuxで使うのは怖くてできない。最終的には手元にあった128GB USBフラッシュメモリーを2つの区画に分け、Clonezillaブート用に8GB、残り120GBをバックアップイメージの保管先にして、ドライブ全体のバックアップを取った。

念のため、Windows 10の回復ドライブとClonezillaの両方でバックアップイメージから復元できることを確認した。

いざ、Linuxへ。

参考:[Clonezilla(Ubuntu-based)を使ってみた - HopStepLab’s blog]

使用感

HP Stream 11-ak0000が届いてUbuntuを導入する前に、Chromeを導入して恒例のBasemark Web 3.0を実行した。その後、バックアップを取ってからUbuntu 18.04 LTSを導入し、こちらもChromeを導入してBasemark Web 3.0を実行したところ、意外なことに Windows 10で計測した時よりもUbuntuの方がスコアが高くなった。Windows 10上では193.66だったのが、Ubuntu上では 237.22 で、約20%の性能向上である。ちょっと得した気分になった。

Basemark Web 3.0のスコア比較は下図のようになった。

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Basemark Web 3.0 実行結果比較

また、Basemark Web 3.0のスコアを千円で割ったコストパフォーマンス比較は下図のようになった。

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コストパフォーマンス比較

HP Stream 11-ak0000でUbuntuを使用した場合、これまで高いコストパフォーマンスを挙げていた iPad mini 第5世代を抜いた。絶対的なCPU能力は低いが、Webサイトを読むレベルであれば最強かもしれない。

Windows 10は1時間程度しか動かしていないが、Intel Celeron N4000でもファイル操作やWebブラウジング程度ならストレスなく動く。Yoga BookのIntel Atomプロセッサーに比べると動作が若干滑らかになったと感じられる。その後Ubuntuにしたら、起動の時間がWindows 10に比べると明らかに遅い。この辺りはさすがWindowsといったところだ。また、GUIの描画の反応がやや鈍く、アプリケーションの起動も遅い。これは昔から変わっていない。CPUやGPUが変われば速くなるのだだろうか?多少チューニングが必要そうだ。

ストレージの空き容量についてはWindows 10よりもUbuntuの方が多い。Windows 10 の空き容量の確認は記録がないので実際の数字はないが、セットアップ直後で35GB程度であるようだ。Ubuntu 18.04 LTS にした場合、空き容量は45GBになった。

参考: [HP Stream 11-ak0000 (2020年モデル)レビュー:税込2万9700円で約1kgの激安11インチノートPC - こまめブログ])

セットアップ直後のUbuntuの空き容量は下記のようになっていた。

$ df -h /dev/mmcblk0p[12]
Filesystem      Size  Used Avail Use% Mounted on
/dev/mmcblk0p1  511M  6.1M  505M   2% /boot/efi
/dev/mmcblk0p2   57G  8.9G   45G  17% /

ストレージのサイズが64GBとなっているが、ストレージのサイズの一般的な表記で「GB」は「GiB」を指し、1KB = 1000 Byteとなるため、64GiB = 64 x 1000 x 1000 x 1000 Byteを意味する。OSの表記では1KB = 1024 Byteなので、eMMC 64GiB の容量はOSでは58GB程度と表示される。OSのストレージ使用容量について単純に比較をすれば、UbuntuではWindows 10よりも10GB少ないということになる。実際に使用する場合は、Windows 10で大規模アップデート時には10GB以上の空き容量を予約域として確保すべきことを考慮に入れると、その差は20GBとなり、ストレージの全容量の1/3に相当する。

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ストレージ使用量

膨大なSWの過去資産も動かせ、膨大な付属装置をサポートする上でWindows 10自体がより多くのストレージを要求するのは理解できるが、HP Stream 11-ak0000 のように非力で小容量のPCでLinuxを使うというのは現実的な選択になろう。

キーボードの打鍵感にはそれ程違和感はない。ただ、左下の「Ctrl」キーと「Fn」キーがThinkPadと逆の配置なのが一番戸惑っている。また、「PgUp」「PgDn」「Home」「End」キーが独立していない事が生産性を下げることに改めて気が付く。ガシガシと入力するような使い方には向かない。

タッチパッドについては中ボタンが使えない点以外は不満点は無い。反応はやや鈍いが、通常の操作は勿論のこと、2本指のスクロールもできる。トラックポイントを探す癖は治らないが、無くても操作に困る程ではないし、マウスを使う程ややこしい事をするつもりも無い。

大きさはA4サイズより小さく、普段使用しているPatagonia Lightweight Travel Courier (15L)にすっぽり収まる。重さは多少気になるが、ショルダーとして斜め掛けにすれば、余り気にならない。

全ての児童にPCを

このHP Stream 11-ak0000は、文科省の掲げる「GIGAスクール構想」の標準仕様を満たしていない。タッチパネルには対応していないためだ。LTE接続は対応していないが、外付けで対応する事はできる。具体的にはLTE対応のモバイルWi-Fiルーターの使用を想定していると思われる。

各社から11〜14インチで5万円以下で「GIGAスクール構想」の標準仕様を満たしたモデルが出て来始めたが、タッチパネル以外はHP Stream 11-ak0000と同レベルの仕様になっている。若干高くなるが、CPUがIntel Celeron N4100だったり、eMMCがSSDになったり、128GBだったり、メモリーが8GBだったりというバリエーションが見られる。

GIGAスクール構想」の標準仕様を見て真先に頭に浮かんだモデルが Surface Goだった。しかしSurface Goでは補助金の上限を軽く超える値段になる。そして、日本マイクロソフトSurface Goのセールをするのではなく、インフラのビジネスに軸足を置いた戦略を採っている。モデルチェンジの噂があるので在庫処分するかと思ったが、PCメーカーに対して配慮したのかもしれない。

GIGAスクール構想」の標準仕様を良く読んでみると、Bluetooth接続のキーボードは不可となっている。Bluetooth接続だと、数十人が同時に教室内で使用する際に電波が干渉して不安定になるから、という理由だ。そして、「マウス」については何も書かれていない。何故だろうか?あえて記載がない事でマウスの使用は現場に任せるという事だろうか。あるいは、タッチパネルが標準仕様に含まれていることから、タッチパネル、または、タッチパッドでの操作を日本標準としようとしているのだろうか。教員がマウスが無いと操作できない、といった状況に対応するためだろうか。マウスの存在が児童たちの間でどうなるのかが楽しみだ。もしかすると、マウスが無いと操作ができないと感じるか否かは、世代によって明確に分かれるのかもしれない。

他に「GIGAスクール構想」で気になったのが、Windows Updateである。大規模なアップデートがあるときにはどうするのだろうか?このマシンスペックだと数十分〜数時間かかるし、児童数に応じて回線使用率が極端に上がる筈だ。授業開始と同時にWindows Updateが始まって「せんせー、パソコンが動きませーん!」が連発したら授業どころでは無い。

そこがGoogle ChromeApple iPadの訴求ポイントになっている。その対策として、学校単位や教育委員会単位でWSUS (Windows Server Update Services)を導入するのだろうか?Windows Update の煩わしさがYoga Bookを手放した大きな理由だったため、この点が非常に気になる。

妥協できれば使い物になる

今回購入したHP Stream 11-ak0000は、自分の中ではネットブックのような位置付けのPCである。10年程前に白色のASUS Eee PC 900HAを購入してHDDをSSDに換装したり遊んでみたが、結局はファンノイズが煩いのが嫌で手放した。当時のノート PC は安くとも20万円近くするものだったのが、5万円以下で重量も1.12kgと軽く、格安のサブノートPCとしての価値があった。

今回も色は白で、ケース素材はプラスチックである。ストレージの交換はできないが、ファンレスで静かだ。壊れたとしても1kg以下のIntel Coreプロセッサー搭載のモバイルパソコンの1/3以下の値段だ。自転車で言えば高額なカーボンフレームのロードバイクではなく、ママチャリの感覚で使える。高級感はなく、プラスチッキーで、そこが良い。何というか、チープカシオに通じるモノがある。

Intel Coreプロセッサーに慣れた人が、このHP Stream 11-ak0000を使うには忍耐力が必要となるだろう。タッチパネルが無いため、子供の教育用にできるわけでも無い。動画編集は遅くてやっていられないだろう。しかし、コーディングとか調べ物用、ブログの記事作成用としては十分な性能だ。少なくともIntel AtomファミリーのCPUに比べれば快適である。

更に、今回はUbuntuで使うため、Windows Updateの煩わしさがない。勿論システムの更新は必要だが、デフォルトの設定では勝手に裏で動いて、何をやっているのか、どこまで処理が進んでいるのか分からずにCPUが100%で張り付いた状態で待つ事はない。少なくとも何をやっているのか知ることができる。AtomプロセッサーではWindows Updateの適用が始まるとマウスも碌に動かない状態だった。

画面解像度も低いので文字は粗いし、発色もそれなりだ。それでいてA4サイズ以下の面積、厚さ2cm未満、重量1kgに収まって税込3万円未満である。特に重量を1kgに抑えた点は重要である。

残念なのは、USB Type-CポートがあるのにPCへの給電には使えない点だ。USB-PDでのPC充電ができると、外出時のACアダプターがスマホ用と共通化できるため、アダプターの重量約250gを減らせる。ACアダプターも3極のミッキータイプの電源ケーブル独立式であるため、ケーブルも太くて扱いにくい。そのため、電源ケーブルは市販の20cm程度の短いものに変えている。

参考:[ainex ACP-C5018]

幸い今期モデルでは色も白になって、以前のような使いにくい青ではない点も個人的に評価が高い。まだ寒い時期なので何処まで大丈夫か分からないが、ファンレスであるため静かであることも大切な点だ。このモデルでシリーズ3世代目なので大丈夫だろう。

まとめ

  • GIGAスクール構想」の標準仕様は満たさない。
  • A4サイズ以下の面積、厚さ2cm未満、重量1kgに収まって税込3万円未満。
  • ママチャリ感覚で使えるが、出来ることもそれなりで、割り切りが必要。