dhtakeuti’s thoughts

主に開発やPCについて考えたこと、感じたことの記録

Intel - Project Athena

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Project Athena 2019

COMPUTEX 2019 でインテルから発表された Project Athena (仮称) によって、3年後のノートブックPCを考えてみる。

参考:次世代ノートPCでは1秒復帰/薄型狭額縁/AI機能/Core i5以上が標準に - Intelのモダン化規格「Project Athena 1.0」を公表

今回の発表で、ユーザーにとって最も影響が大きくなると感じたのが、入出力インターフェイスの仕様である。ストレージ I/F は NVMe を、無線 LAN には Wi-Fi 6 (IEEE802.11ax Draft 2.0) を、拡張 I/F には USB 4 (Thuberbolt3) をそれぞれ要求している。セルラーモデムはオプションとされているが、5G モデルが想定できる。恐らく、有線 LAN においても 10Gbps が家庭にも普及し始める事が予想される。その通りであれば、現在の標準的なノートブック PC の約10倍の転送速度となる訳だ。

Project Athena に準拠したモデルが、現在の標準的な15万円程度まで価格が下がって来るのに3年かかるのではないかと思う。つまり、2021/1Q モデルが価格もこなれて買い時なのではないだろうか。それに合わせて、周辺機器なども準備していく方が良い。既に無線LAN ルーターでは 10Gbps のモデルがゲーム用として5万円弱で販売されている。10GBASE-T の有線LAN のスイッチングハブは4ポートで7万円弱で販売されている。インターネット接続については、光ファイバーを使用した 5Gbps の回線契約も一般家庭用に出てきはじめている。NAS10GBASE-T 対応のモデルがあり、4ベイで6万円程度で購入できる。

4ベイ NAS に HDD を4台乗せて RAID10 で構成したとしよう。SATA 3.0 接続で RAID による速度低下も考えて、転送速度は 200MB/secくらいは出るはずだ (標準的な 3.5インチの HDD の転送速度は 250MB/sec 位は出る)。勿論 HDD の代わりに全て SSD で構成すれば、SATA 3.0 の上限の 600GB/sec (6Gbps) に近づく事になる。つまり、現在のデスクトップ PC の内蔵 HDD の感覚で NAS 上のファイルにアクセスできる様になるわけだ。

同様に、無線LANを経由して光回線で 5Gbps 出るとすると、サーバー側が対応していれば、理論値では 500MB/sec が出る。実効 30% でも 150MB/sec が期待できるのではないだろうか。更に 5G ネットワークが普及すると、セルラーモデルでは屋外でも同様の速度でインターネットにアクセスできる様になる。例えば、FullHD 画質で1時間半の映画の 60GB の動画データが、7分弱でダウンロードできる事になる。8K 画質の映像の転送には 100Mbps が必要と言われているが、これも 5G 接続で十分賄えるだろう。

さて、インターフェイス全般が約10倍に早くなると、次の様な影響が考えられる。転送速度が上がる。→ 動画や写真の画質が上がる。→ データ容量が増加する。→ バックアップのデータ容量が増加する。つまり、より高解像度で大容量のデータを保持し続けるためには、より安価なバックアップメディアが必要になって来るという事だ。既に我が家ではHDDがバックアップメディアとなって久しいが、そろそろ他のメディアによるバックアップを考えると同時に、バックアップ対象となるデータの見極めも必要になりそうだ。書籍やコミックはオンラインサービスに置き換えつつあるが、サービスの継続ができなくなった場合に、過去に購入した書籍やコミックを見る事ができなくなる危険性と表裏一体となる。音楽データは iTunes で CD からデータ化して所有しているが、書籍とコミックについては読む権利を購入したに過ぎない点が不安材料である。ebookjapan の yahoo への引越しの際に、リーダーアプリの目に余るサービス低下に使用継続を停止しようかと思ったが、これまでに購入した数千冊のコミックが読めなくなるのは回避したいがため、使いにくいリーダーアプリを渋々使っている。データの所有権がないのに紙媒体と同じ値段でいいのか?という疑問もある。それ以外のデータも含めて、複数のクラウドストレージ上にバックアップを置くというのも今後は選択肢に上がるだろう。いずれにせよ、現在と同じくらいの価格で約10倍の容量のストレージ技術が普及する(例えば 100TB HDD が 5万円程度に収まる)とは思えないので、何らかのブレイクスルーがある事を期待せざるを得ない。

CPU の世代は Ice Lake 以降の設計となり、10nm プロセスでの実装となる(はず)。それによって低消費電力が期待でき、バッテリーの稼動時間が伸びる事が期待される。但し、Project Athena では 16 時間以上のバッテリー駆動を要求しており、CPUだけでなくチップセット、ディスプレイやストレージの省電力化が求められる。現在市販されているデスクトップ用の 10GBASE-T 拡張カードには大きなヒートシンクが付いている。それだけ発熱が懸念されるが、これが解消できるのだろうか。また Project Athenaとしては、ディスプレイに 1080p 以上の解像度が要求されているが、昨今の傾向から、4K レベルの解像度のディスプレイが搭載される事が期待したい。これは有機EL よりも低消費電力なディスプレイパネルが出てこないと実現は難しそうだ。それが無理でも 3K レベルのディスプレイが搭載されるだろう。ストレージについても現在は SATA 接続の SSD の方が低消費電力、低発熱であり、NVMe 接続と転送速度以外では価格も含めてメリットがある状況だ。どうにかして SSD は 2TB 程度の容量で現在の 256GB と同じ程度のコストになっていて欲しい。

Project Athenaでは、ペン入力も必須となっている。これにより、クラムシェル型のノートブックPCは存亡の危機に陥るかもしれない。Yogaスタイルか、Surfaceスタイルの 2-in-1 モデルでなければペン入力を活かす事ができないからだ。少なくともディスプレイを180度は開く様になっている必要がある。

Intel が Project Athena で築こうとしている世界は、iPad Pro の延長線と重なるようにも考えられる。Ultrabook も Macbook Air をなぞったような構想であり、モバイル用のノートブックPCは既に Ultrabook の目指した形を実現していると言えよう。Project Athena も、名称が変わるかもしれないが、同様に数年をかけて実現の方向に進むだろう。Project Athena は、その先にどんな未来があるのか楽しみになるような発表であり、久しぶりにワクワクしている。

まとめ

  • Project Athena が発表された。
  • 3年後にはPC周りの通信速度が約10倍になりそうだ。
  • これまでとは異なるPCの使い方が必要になるかもしれない。